大人の発達障害

 

 

大人の発達障害

発達障害の原因 わかっていること わかっていないこと

わかっていること

遺伝子が主な要因である
次いで環境が主な要因である (出生後に症状が出てきます)
遺伝要因と環境要因が組み合わさっている
ワクチンや子育てが原因ではない

わかっていないこと

どの遺伝子がどのように関連して症状を引き出すのか
親からの遺伝がどの程度か
遺伝しないで発症する確率(その人の遺伝子の突然変異)がどのくらいか
環境要因が何なのかはまだわからないことが圧倒的に多い

 

 

ASD(自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群、広汎性発達障害)

 

大人の発達障害、症状の特徴とは? 職場で配慮したいことを解説

ASDの具体的な特性・症状

コミュニケーションを要する業務や活動が苦手
やり取りが上手くできない
目上の人に友達のように話しかける
関心の範囲外には、興味が持てない
自分のやり方へのこだわりが強い
日常動作へ執着が強く、融通が利かない
感覚刺激の敏感さ(気温の変化など)に苦労している

 

配慮したいポイント

コミュニケーションに困難を抱えている場合が多いので、情報を伝えるときには、肯定的、具体的、視覚的な伝え方の工夫が必要

言葉で伝える際には、抽象的表現を使わず、「○○をしましょう」と具体的でシンプルな言葉を使ったり、図・イラストなどを使った説明を掲示したりすることで、情報が適切に伝わりやすくなります。

関心範囲が狭いこともあり、業務がマルチタスクになると業務を取り回すことが難しくなってしまいます。
シングルタスク化したり、明確な優先順位を付けたりする支援が必要です。

また、複数のステップがある業務においても、それぞれをスモールステップ化し、支援することで、よりスムーズな業務に変化させることが可能です。感覚過敏がある場合は、感覚の入力が過度にならないような配慮を工夫しましょう。

 

大人の発達障害(ADHD /ASD)

自閉スペクトラム症(ASD)
人の顔(目を)見て話すのが苦手。

「相手の気持ちを察する」ことが難しい。
集団行動が苦手で無理に合わせると苦しくなる。
雑談では何を話してよいかわからなくなる。
数名の集団での会話では話についていけなくなる。話に入っていけない。
音や光、人に触れることに過敏。
「空気を読む」ということができない。よくわからない。
周りの人が普通にやっていることが、自分はなぜかできない。

 

大人の発達障害

ASD は人との関わりやコミュニケーションに困難が表れている障害です。
興味や関心が狭い範囲に限られやすく、独特の行動や振る舞い、こだわりが見られることもあります。
また、感覚が人よりもとても敏感なことがあり、逆にほとんど感じない部分がある人もいます。

ASD の主な症状と特徴

グループでの業務・活動が苦手。
やり取りがうまくかみ合わない。
伝えたいことを言葉にまとめることが難しい。
人の話に関心を持てない。
自己流で物事を進めたがる。

 

発達障害とは?特徴や症状、原因、診断や治療などをわかりやすく紹介します

ASD(自閉症スペクトラム障害)の症状と困りごと

ASDには対人関係が苦手、こだわりが強い(興味・関心が限定される、特定の行動を繰り返す)といった特徴的な2つの症状があります。そのほかに感覚過敏、感覚鈍麻の症状が見られる場合も多くあります。また知的障害を伴う場合と伴わない場合があります。

 

対人関係が苦手

他人と目を合わせない
相手や状況に自分の行動をあわせることが苦手
皮肉やたとえ話を理解できず、文字通り受け取る
職場でオウム返ししたり、単語で会話したり、一方的に話したりする
暗黙のルールが理解できず、集団での共同作業で困りがち
難しい言葉や表現を好んで使う など

 

こだわりが強い(興味・関心が限定される、特定の行動を繰り返す)

小さな変化に苦痛を感じる
柔軟な考え方をすることが苦手
ルールやマニュアルから外れるのが苦手
同じ種類の服を着る、同じメニューを食べ続ける
決まった順序や道順にこだわる など

 

感覚過敏・感覚鈍麻

多くの人にとっては平気な職場の音や照明などが苦痛(またはその逆)
暑さや寒さ、触り心地などに非常に敏感(またはその逆) など

 

ASD(自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群・広汎性発達障害など)

グループでの業務・活動が苦手

仕事の場面で言えば、ASD の人は一人で黙々と作業をするのは得意な傾向にありますが、チームで業務を行うのが苦手な人が多くいます。
よく「空気が読めない」と表現される状態です。チーム内で孤立してしまったり、周囲と足並みを揃えずに自分が良いと思ったことを独断で行い、他のメンバーを混乱させてしまうことがあります。
言葉や図で説明されない限り、本人にはチームがどんな目標のためにどうやって動いているかを理解したり、それを踏まえて自分はどう動けばよいかを理解するのが難しいのです。
結果として周囲からは非協力的な態度だと受け取られてしまいやすくなります。

 

やり取りがうまくかみ合わない

言われたことを独自に解釈して理解のズレが生じたり、わかりにくい表現をして相手にうまく伝わらないことも少なくありません。

仕事の上では業務の指示を誤って理解したり、報告や相談をするときに話が分かりづらく支障が出ることがあります。
また職場では状況が色々と変化する中でその場で言われたことを理解し適切に返答するといった動的なコミュニケーションが求められるようになります。
そのようなスピード感があり、きちんと具体的に説明しないやり取りだと理解が追いつかなかったり言いたいことをぱっとまとめて伝えられないという人も少なくありません。

 

自己流で物事を進めたがる

仕事であれば、マニュアルや指示の通りに作業をするよう言われていても、自分が気になってしまうと作業を先に進めることができなかったりします。
中には指示されていないことも気になってしまい、違う方向に作業してしまう場合もあります。
このため作業の効率が落ちたり作業が完了できなくなることもあり、職場での評価が下がってしまうことも残念ながら少なくありません。

 

 

LD(学習障害)/ SLD(限局性学習症)

 

大人の発達障害、症状の特徴とは? 職場で配慮したいことを解説

学習障害は、単に学校の教科の学習が苦手ということではありません。
知的な遅れなどがなく、教育環境も整っていて、ご本人が努力しているにもかかわらず、ある特定の領域で学習に困難があるような障害

LD/ SLDの具体的な特性・症状

文字をひとつひとつ拾って読む(逐次読み)
文末などを適当に変えて読んでしまう
拗音や促音を間違えたり、読み飛ばしたりする
鏡文字を書いてしまう
文字を書くスピードが遅い
漢字を覚えられない
文字をバラバラの大きさで書いてしまう
算数・数学の概念や計算を学ぶことが難しい
図形やグラフが苦手で、うまく理解できない

 

 

大人の発達障害(ADHD /ASD)

限局性学習症(SLD)

計算が苦手で会計のときに戸惑う。
数字の桁が増えてくるとわからなくなる。
読むこと、もしくは書くことが苦手。

 

大人の発達障害

単に国語や数学が苦手ということではなく、「認知能力」や「聞いたことや見たものを処理する能力」に凹凸があり、結果として読み、書き、計算が苦手として表れている障害です。
幼少期には障害のあることがわからず、年齢を重ねて求められる水準が高度化するにしたがって症状が目立ち始めて、その時になってはじめて障害があることがわかったというケースもあります。

LD / SLD の主な特徴

文字や単語、文章を読むときに正確でなかったり速度が遅かったりする。
読んで意味を理解することが難しい。
発音が正確ではない。
文字や文章を書くことが難しい。
数の概念、数値、計算を学ぶことが難しい。

 

発達障害とは?特徴や症状、原因、診断や治療などをわかりやすく紹介します

学習障害(LD)の症状と困りごと

学習障害には知的発達には遅れが見られないものの、読み書きや計算など特定の能力が必要な学習が苦手で困難さが生じます。学習障害は苦手の種類によって主に読字障害(ディスレクシア)、書字表出障害(ディスグラフィア)、算数障害(ディスカリキュリア)の3タイプに分けられます。

 

読み書きや計算など、特定の学習が苦手

目から入ってくる情報をうまく処理できず、図形や似たような文字を理解しづらい
文章のどこを読んでいるのか分からなくなる
読み書きに他の人よりも努力が必要なため、疲れやすい
計算や読み書きが必要な場面で困る
その場で書類に字を書くのが難しい など

 

 

ADHD(注意欠如多動性障害)

 

大人の発達障害、症状の特徴とは? 職場で配慮したいことを解説

ADHDは、「不注意」と「多動・衝動性」を主な特性とします。

不注意は一つの事柄への集中が続かないため、ケアレスミスが多くなります。

 

ADHDの具体的な特性・症状

次々と周囲のものに関心を持つ
仕事中に不注意になる
注意を持続することが難しい
外からの刺激によってすぐに気が散ってしまう
日々の活動を忘れやすい
必要な道具をなくしてしまう
他人のしていることに口出しする
衝動的に暴言を吐いてしまう

 

配慮したいポイント

大人のADHDは、どちらかというと不注意に起因する特性が目立ちます。
気が散りにくい座席の位置を設定したり、整理整頓しやすいように棚・デスクに工夫したりすることが助けになります。

また、ADHDの特性のために、「どんなにがんばってもうまくいかない自分」という否定的な自己イメージを持ちやすく、職場において辛い思いを抱えていることがあります。

 

大人の発達障害(ADHD /ASD)

注意欠如・多動症(ADHD)

注意欠如・多動症(ADHD)
一つの作業をやっていても他の作業が気になるとそっちを始めてしまい結局全部中途半端になってしまう。
片づけるのが苦手。
物音や話し声がするとすぐに集中が切れる、注意がそれる。
ゲームやネットに夢中になるとやめられなくなって気がついたら深夜や朝方になっている。
「まとめて」「簡潔に」話すのが苦手
メールの文章が長くなる。段落をつけることができない。
話の要点がわからない、まとめられない。

 

大人の発達障害

ADHDは、うっかり間違いが多かったりじっとしていられないなど、いわゆる「不注意、多動・衝動型」といった特徴・症状が表れている障害です。
ADHDの方は幼少期から失敗経験が多く、人により自分に自信が持てず、自分を否定的にとらえてしまう方がいます。
場合によっては「不安」「うつ」などの二次障害を発症される方もいます。

ADHD の主な特徴

細かい注意を払うことができない。
注意を持続しつづけることが難しい。
忘れる・抜け漏れることがある。
順序立てて課題を進めることが難しい。
ソワソワと手足を動かしたり、座っていてもモジモジ動いてしまう。

 

困りごと1: 予定や計画の管理が苦手

ADHD の方は仕事の優先順位をつけることや複数のタスクを同時にこなすことができないことが多いため、予定や計画の管理が苦手な方が少なくありません。

対処方法

計画を実行するための時間が取れているか、優先順位は適切につけられているか、同時に複数のタスクをすることになっていないか、を確認しましょう。
優先順位をつける際は、締め切りが速いものや重要度の高いタスクの優先度を上げましょう。
可能であれば、第三者の意見を取り入れるようにしても良いでしょう。

「予定や計画は適切だが想定通りに進まない」場合は、都度計画の立て直しが必要になります。
最初に計画を立てる段階で、「〇月×日までに△△まで終わっていなければ上司に相談する」などの対応策を考えておきましょう。

一般的に、復習をすることが大事です。

 

困りごと2: 「うっかり」ミスが多い

「うっかり間違い」や「うっかり忘れ」は、ADHD の方の特徴の一つです。
日常生活の中であれば笑い話で終わったとしても仕事上ではそうはいきません。

対象方法

まずはどのような状況でミスが出やすいか確認、分析を行い、特にミスの出やすい状況になった際にどのような対策をすれば良いか考えましょう。
そして、考えた対策を箇条書きなどにしてチェックリストなどを作成して確認するようにします。
他の人にチェックをお願いできるようであれば早めにチェックをお願いすることも有効です。

自分がしようとすることを周りの人に事前に話しておけば助けてくれます。
またどのような順番で、なぜするのかを考える癖をつけるようにします

完璧を求めすぎてもいけません。
「うっかり」を完全になくすことは、どんな人にとっても難しいことです。
うっかりミスを防止する工夫を考えつつ「ミスした後にどう対応するか」を考えておくとよいでしょう。

 

発達障害とは?特徴や症状、原因、診断や治療などをわかりやすく紹介します

ADHD(注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害)の症状と困りごと
ADHDは不注意、多動性、衝動性の3つの症状を特徴とする発達障害です。「不注意」とは集中力が続かず注意力散漫な様子、「多動性」とは落ち着きがなく行動をコントロールできない様子、「衝動性」とは衝動的な感情を抑えられない様子が見られるという意味です。
 
不注意
  • ケアレスミスが多い
  • 集中するのが苦手で気が散りやすい
  • やりたいことや好きなことに対して集中しすぎる
  • 物の置き忘れや、なくし物が頻繁にある
  • 片付けや整理整頓が苦手
  • 約束や時間、提出物の期限を守るのが苦手 など
 
多動性-衝動性が強い
  • 物事の優先順位が分からない
  • 落ち着いてじっとしているのが苦手
  • 衝動的に不適切な発言や行動をする など

 

発達障害の症状の改善方法は?

大人の発達障害、困りごとの改善策や症状のやわらげ方、環境調整などの対処法を説明します

  • 予定管理が苦手な人がスケジュールに余裕を持って対処できるように、スマートフォンなどの予定管理アプリを使ってスケジュールを把握したり、予定が近づくとアラートが鳴ったりするようにしておく
  • 口頭での作業指示が苦手な人は、会話中にメモを取ったり、相手の了承を得た上で指示の内容を録音する
  • マルチタスクが苦手な場合は、やるべきことをリストアップして優先順位を可視化する
  • 「一人でカフェに行き、気持ちを落ち着ける」「別の作業や運動を行う」など、衝動や感情のコントロールが難しい場合に気持ちを切り替えられるスイッチになるような行動を見つける
  • 活字より手書きの文字の方が読みやすい場合やその逆の場合、特定のフォントであれば比較的読みやすい場合など自分の特性を把握し、それぞれ可能な場面で読みやすい文字を活用する
  • 書字表出障害がある場合は、ボイスレコーダーや、スマートフォンによる写真や動画の撮影などのツールを使って記録する